二人目を妊娠していた頃、私は子育てしながら仕事をし、スキルアップのためにトレーニングを二つも受けていました。

もちろん、大好きなお仕事なので楽しくお仕事させていただいていたのですが、移動が多く体に負担があったのか、切迫早産と診断されたことがありました。ヨガのクラス中はなんともないのですが、帰り道。電車の中で座れないときなど、体が重く骨盤底が上から下へと押されるような圧迫感がありました。体がしんどいと、帰ってからのことが気になります。

・最寄り駅に着いたら、上の子を保育園に迎えに行かなきゃいけない
・その帰りにスーパーに寄らなきゃいけない
・家に着いたら洗濯物を取り込まなきゃいけない
・その間に娘の遊びの相づちをうたなきゃいけない・・・グズグズだと嫌だな・・・
・お風呂を沸かして、娘を入れなきゃいけない
・ご飯の支度をしなきゃいけない
・洗濯物をまわしながら、夕飯の後片付け、明日の朝の準備、寝かしつけ・・・
・トレーニングのレポート、論文・・・

このTo Doリストが私を追い詰めていました。余計に骨盤底が押され、お腹が硬くなり、今にも産まれてきてしまいそう・・・。気づけば、「~ねばならない」リスト。すべてがやらなきゃいけないで締めくくられている。

あれ?これって本当にやらなきゃいけないこと??
ある日、電車の中でひとり可笑しくて自分のTo Doリストに疑問を持ち笑ってしまったことがありました。

・上の子を迎えにいかなきゃいけない・・・?

行かなきゃいけないの?って思ってみただけなのに、いいや、迎えに行きたいんだ、会いたいんだってすぐに頭の中で変換されました。それだけなのに、とても幸せな気分になるのです。

・スーパーに寄らなきゃいけない・・・?

寄らなくたって何とかなるし、在り合わせの夕飯だって子どもの顔見て話を聞きながら食べれたら何だっていいじゃん!と思えたら、むしろわくわくしました。

毎日一番しんどいと思っていたお風呂にいれることも、いつも段取り重視であれしてこれしてパパッと済ませたいと思っていましたが、今日は残りわずかなひとりっこ生活!上の子の体をゆっくり洗ってあげよう。しんどくて洗ってあげられなくても死にはしない!今日はもしかしたら彼女の体の成長に気づいちゃうかもしれない。

・・・なんて電車に揺られ、流れる景色を見送りながら考えていたら、深い大きなため息が出ました。ため息が出たら、ぶわ~っと涙が溢れて、今がとても幸せに満ちていることに気づきました。お腹の中の赤ちゃんのことを思い、あなたが生まれてくるところは素晴らしい世界よ・・・と話しかけるとお腹の張りも緩んでいくのです。あれもしなきゃいけない、これもしなきゃいけないと思っていた3分前とは真逆な私。

心が不安になったり落ち着かない時というのは、心がここにいない時なのだそうです。過ぎてしまった過去を悔いていたり、まだ来てもいない未来を案じていたり。心を、意識を「現在」に集中してみると、私たちは「今・ここ・この瞬間」を生きるために必要なものはすべて与えられていると言います。

え?そうかな?病気の人も?と思うかもしれませんが、そうなんです。誰しもが「今」を生きています。「今」しか生きていません。不可欠なものがあるように見えるのは、「過去」や「未来」を見ているから。

過去の積み重ねが「今の自分」を作っているならば、未来は「今」の積み重ねでしかない。だから、「今」を大切にするしか私たちには出来ない。未来にばかり心を馳せて「今」を否定しているといつまで経っても望む未来はやってきません。だから、今をゆっくり見つめてみましょう。

こんなことを書いている私ですが、いつだってこんなに冷静なわけではありません。いつも生活に追われています。心も体も騒ぎまくって右往左往します。でも、体や呼吸が教えてくれていることに素直に気づくことはできるようになりました。

体がしんどかったり、肩がこったり、呼吸が浅くて眠れなかったり。そんな時はたいがい、心がここにいません。あれ?うまくいかないぞ?と思った時にヨガが役立ってくれます。

「今、ここ、この瞬間」を見つめようと言われても、心・思考は騒がしくあれだこれだと考え、分析しようとします。そんな時は呼吸法が今に心をつなぎとめてくれます。意識的に深い呼吸をするだけで、神経が鎮まり、思考のスピードは下がります。

呼吸への集中が保てないときは、ヨガのアーサナを行えなくても、今おこなっている行為を意識化してみます。途端に行動は丁寧になるはずです。たぶん、これは繰り返し繰り返しによる訓練です。でも、子育て中ってそんなヨガの訓練に最適な時期だとも思います。「今」を生きる天才・・・子どもと共に、「今」を生きてください。

ヨーガの諸部門を修行していくにつれて、心の不浄さが次第に消えて行き、それについてやがて、識別智(ヴィヴェーカキャーティ)を生じさせる智慧の光が輝き出す。
ヨーガ・スートラ Ⅱ-28

文 ヨガインストラクター ミヅホ/編集 七戸 綾子