ヨガのクラスでは多くの場合、呼吸を整えるところから始めます。
ヨガの「呼吸法」は、100種類以上もあると言われ、様々なテクニックがあります。
でも実は、ヨガでしている「呼吸法」は、「呼吸法」では無いと言うのをご存知ですか?

厳密に言うと、ヨガの呼吸は「調気法」なのです。

「調気法」のことをヨガの言葉であるサンスクリット語では、「プラーナーヤーマ」といいます。「プラーナ」は、宇宙に満ちている生命エネルギーのことを指し、日本語でいうと「気」にあたります。また、「アーヤーマ」は拡張するを意味します。

ヨガでは私たちの肉体はもちろん、感情や思考の活動もプラーナからなると考えられ、「プラーナーヤーマ」は、私たちの身体と心をつなぐ架け橋の役目をなし、体内に流れるプラーナ(気)をアーヤーマ(拡張)することで、日常生活で経験される身体的・精神的能力の限界を超え、身体に活力を与え、心に永続的な平静さを培うことを指します。

普段から私たちは、例えばイライラすると呼吸が早くなったり、緊張すると瞬間的に呼吸が止まったりするのを経験していますが、それを感じると、意識的に深呼吸をしたり、ため息をついたりと、自然に呼吸を整えるようなことをして、心を整えているのではないでしょうか?

ヨガの経典の1つである『ハタ・ヨガ・プラディーピカー』でも、呼吸と心の関係を以下のように述べています。

「気が動くと心も動く。気が動かなければ心も動かなくなる。ヨーギーは不動心に達しなければならない。だから気の動きを静止すべきである。」
――ハタ・ヨガ・プラディーピカー 2章2節

また別の経典『ヨーガ・スートラ』では、プラーナーヤーマについて、以下のように述べています。

「安定したアーサナが得られたならば、呼息と吸息の流れを断ち切ることがプラーナーヤーマである。」                        
――ヨーガ・スートラ 2章51節

「プラーナーヤーマには、内的あるいは外的な対象に集中しているときに起こる、第四の型がある。」                         
――ヨーガ・スートラ 2章51節



つまり、「プラーナーヤーマ」は単なる“吸う・吐く”をコントロールする「呼吸法」ではなく心身の生命エネルギーをコントロールする方法であり、“吸う・吐く”と“止める”あるいは、自然に“止まる”(第四の型)を実践することを指します。
呼吸が自然に“止まる”ことを「ケヴァラ・クンバカ」といい、深い瞑想に入ると「ケヴァラ・クンバカ」は自然に訪れます。

また、ヨーガ・スートラでは、次の節で以下のように述べています。

「その結果、内なる光を覆い隠していたヴェールが破壊される。」 
――ヨーガ・スートラ 2章52節


調気法の実践のゴールとは、私たちがもともと持っている内側の輝きに気づくこと、潜在意識化にある、記憶や葛藤、執着や憎悪など内なる光を覆うものを取り去ることなのです。

と、ここまで難しく書きましたが、ヨガの時間、普段の生活で無意識になりがちな呼吸に意識的になることで、気持ちが落ち着いたり、安らいだり、リセット出来たら、それで充分素晴らしいプラーナーヤーマなのだと思います。

なお、プラーナーヤーマを本格的に実践する場合は、専門家の指導のもとで行いましょう。

***

|プラーナーヤーマやヨガの呼吸を学ぶコース

ヨガを基礎から学べる
ベーシック・トレーニングコース
ポーズとともに、呼吸法の基本を学び、実践し、自然な呼吸の心地よさを体験します。日常のヨガの練習や、クラスの理解が格段に深まります。

ベーシックなヨガの呼吸法を学ぶ
呼吸法ベーシックコース
呼吸法を通じて体を整えたい人、心の在り方や感情のコントロールに興味のある人におすすめの”呼吸法入門”コースです。

自然の中で深める呼吸法&瞑想<リトリート型>
プラーナーヤーマ・インテンシヴコース
ヨガの様々な呼吸法を探求し、呼吸法と瞑想を深める実践的なコース。プラーナーヤーマ(調気法・呼吸法)とメディテーションを深めるのに適した条件は、美しい自然の中で実践をすること。アーサナ(ポーズ)、心身の浄化法、呼吸法を探求します。

文 ヨガインストラクター ユウ