母から送られてくる荷物には、慣れ親しんだ食材などが入っている。でも、わざわざ入れなくてもこのへんで売ってる!と突っ込みたくなるようなモノまで必ず入っている。子を思う母の、ときに不可解な思いやりのエピソードをご紹介します。

「いっそ電話でも…」

田舎の母からの、月に数回の宅急便。あるとき届いた山口みかんの箱が何やらいつもよりにぎやかで。見ると、マジックで書かれた母の文字。「お、お母さん‥」と思わずつっこんでしまいました。どんな荷物にも一筆添えずにはいられない母、そのときも手紙は同梱されていましたが、書き忘れた内容があったらしく。でももうガムテで留めちゃったし。で、箱にそのまま書くことを思いついたようです。書かれていた内容? まぁあれです、白菜を包んだ新聞紙にそのまま「白菜です。畑からとれたて。生でもおいしいよ。お鍋もいいです。母より」と書いてよこすのと同じで、あってもなくても困らないけどなんだか妙にかわいらしい「お母さんらしいメモ書き」でした。

――ライター 山根かおりさんの場合

「何度言っても懲りない」

学生のころ、実家の母からよく荷物が届けられました。米農家なので、メインはお米でしたね。5kgぐらいだったかな。その脇に、お菓子とか、レトルトカレーとか、こっち(東京)でも買えるよ!というものが入っていて。スキマを埋めたかったんだと思うんだけど、「いらないよ。お菓子もお金かかるし、もったいないよ」と電話で何度言っても懲りなくて。あのハートの強さは何だろう? 一番驚いたのは、服が入っていたとき。いくら服装にかまわない僕でもさすがに20歳過ぎて、親の買った服って、着ないですよね。今思い出すだけでもなんだか恥ずかしい(笑)。

――30代男性・会社役員の場合

「量がとてつもない生鮮食品にとまどう」

20代のころ、青森からの母からの宅急便はいつも憂鬱だった。
”私のことを思って”を通り越して、”自分が送りたいもの”が詰め込まれたその箱は、社会人1年目で心に余裕がなかったころはせっかくの母の気持ちに反抗して、お礼どころか「こんなの要らない!!」と電話したことも。母の気持ちは分かっていても、一人暮らしの冷蔵庫に入りきらない魚、野菜、そしてなぜか自家製鮭とば。さくらんぼ5箱を送ってきたことも。

お友だちにあげればいいと言われても田舎と違って近所付きあいもなく、タイムリーに2日以内にさくらんぼを配れる友だちなんてそうそういない。みんな忙しいのだ。今思えばもっと大人になって「ありがとう」といえばすべてが丸く収まったであろうに、どんどんエスカレートして量が増えるのが怖かった。

子どもができた今はありがたく頂戴している。相変わらず尋常じゃない量だし、クール便をケチって微妙な溶け具合で同梱されているものや、なぜか中目黒のお菓子(中目黒勤務なのに~)もあって逆輸入? 突っ込みどころは衰えず。脱水症状防止策の新聞切抜き記事や勝手にサンプル請求した健康食品などの健康系のアイテムは100%入っています。

――きくちゃん・第1子の産休育休から復帰したばかりの会社員の場合

お母さんの宅配便 Vol.2は、こちら

切り絵 辻 恵子/企画・構成 Art of living magazine編集部