包丁を新調したら、先ず人参や生姜を何の目的も無く千切りにする。よく切れる包丁は自分の腕前を3割増に錯覚させてくれる。人参の固すぎず柔らかすぎない質感は、千切りの練習にはもってこいかもしれない。

人参を洗ってへたを取り除き、皮は黒ずんでいたり土が取りきれないなら剥くし、きれいならば剥かない。45°かそれ以下の角度で、まずは斜めにスライスする。厚さは一応2mmくらいを目指して。今度はスライスしたものを何枚か重ねて、やはり2mmくらいに切っているつもりで。理想は均一だが、多少厚くなってしまったら、後からもう半分の細さにすればいい。

もしスライサーがあるのなら、スライサーでスライスしてから、千切りは包丁でやってもいい。千切り用のスライサーもいいけれど、あまりにも均一になりすぎて興ざめする。なにがなんでも包丁で、とは思わないが、きれいすぎない美しさっていうのもあるし、何より食感が楽しいように思う。

さて、千切りの人参はどうにでもなる。サッと茹でて塩とごま油と白ごまで和えればナムルに、オイルと柑橘の酸味でキャロットラペ、油で炒めてきんぴらにしてもいい。わたしは甘酢で和えたり、そのかわりに梅酢とはちみつで和える事が 多い。お弁当のすきまにも忍び込ませやすいし、パン食の時には酸味を添える具材のひとつになる。

写真&文 中村 宏子