苺の旬はもはや、春ではなく冬である。本来は春を知らせる果物だったはずが、クリスマスケーキに使う苺需要の高まりから、どんどん出荷の時期が早まったとか。4月になると、長かった苺の季節もそろそろ終わりを迎え、この頃になると店先には小さい苺が出回り、値段もぐっと安くなっている。ジャムにするには大きな苺よりも、そんな小粒の苺が適しているのだ。

1パックの苺は大体250〜300g。よく洗いヘタを包丁で取り除きボウルに入れ、苺の40%のグラニュー糖をまぶす。3時間から半日置くと、苺から水分が出て砂糖が溶けている。つやつやで美しく火を入れるのが勿体なくなるが、汁ごと鍋に移し中火で10分ほど煮る。アクが出て来たら取り除く。一度は色が抜け白っぽくなった苺が、やがて透き通る深い赤に変わる。レモン汁1/2こ〜1こ分を加えさらに2、3分煮たら出来上がり。時間は目安だが、少し早いかな?くらいが丁度いい。冷めたら自然にトロミがついている。

部屋中が苺ジャムの甘い匂いでいっぱいになり、懐かしい気持ちになる。幼い頃、母が唯一作ったジャムが苺ジャムだったからかもしれない。それはちょっと煮詰め過ぎたような匂いだったが。現代の苺ジャムのアレンジとして、バニラのさやを入れて煮たり、仕上げに黒こしょうやカルダモンを入れるとグッと大人っぽい味になる。

写真&文 中村 宏子