渋谷の住宅街にヨーロッパを思わせるような白くてかわいい一軒家がある。住人は、白と黒を愛するフォトグラファーのシゲさん一家。そのトイレの本棚をご紹介しましょう。

窓からの明るい光に、可憐な野の花。そんな優しい雰囲気にもぴったりな、余白が美しい本が並ぶ。

ふと手にとった『京都名庭』をぱらぱらめくり、「わぁ、きれい」と声をあげていると、「ほかにもおすすめがあるんです」とシゲさんが、未生 響さんの本『カイゼル製菓』と『WALKING THE AROUND』、『ファザーランドジャンボリー』を見せてくれた。いずれも古めかしい活字のような字体が印象的だ。

「ジャケットと中身に惹かれました。ヨーロッパには古くからあるカットアップという技法ですが、バロウズがその手法を取り上げて有名になりましたよね。
テキストを切り刻んで新しく組み合わせる。ふつうは文章に意味を追い求めたりしますが、この人は詩人だから、ことば遊びでイメージをつくっているところがおもしろくて。アイテムとして素晴らしいし、コレクションしたくなります」
とシゲさんが教えてくれた。

読むというより、手繰りながら楽しんでいるそう。

本は読むものだ、というイメージから、そうか、見て楽しんだっていいんだ、と自由な本の愉しみ方をあらためて教えてもらった。文字=意味ではなく、アートになりうるんだ、ということも。

インテリアは白と黒に限り、服も白か黒しか着ないシゲさんだと聞いていたので、この日(初夏)、黒いワンピースを着てお邪魔したところ、なにかの話の拍子で「僕は黒が好きですけど、そんな色着てるとモテないかもしれませんよ~」と突っ込まれたことに驚いた。

写真&文 七戸 綾子