わたしたちは、ついつい仕事を生活の中心に考えがちですが、いま、新型コロナウイルスの影響で、これまでの日常生活をそのまま維持するのが厳しい状況です。これは同時に、今まで当たり前と思われてきたことを見つめ直す、よい機会なのかもしれません。

アナウンサーからアロマセラピストへと転身し、東京から緑あふれる葉山に住まいと活動の拠点を移して10年経った大橋マキさんにお話しを伺いました。

自分の感覚に正直でいること

――自分の望むライフスタイルに変えるにはどうしたらいいのでしょう?

自分の感覚に正直でいることが大切ではと思います。心地よいのか、心地よくないのか、好きなのか苦手なのか。

以前、自然環境と共生するパッシブデザイン建築について興味深い話を伺ったことがあります。土地、土地の自然、つまり太陽光、風の流れ、水の流れをあえて活かすことで、土地の特徴を活かした建物全体が周囲の自然と共に呼吸するような快適さが実現できる、と。

どこにいても、私が感覚的に気持ちいいと感じるのは、自然であれ人間関係であれ、そんな、個々の"らしさ"や個性が息づきながら調和している関係がある状態なのかなと思っています。

自然の営みに囲まれて、感覚がひらく

――自然のそばで暮らす魅力はなんですか?

神奈川県葉山町にある我が家の窓から見える色彩。それは圧倒的に緑色です。朝目覚めると、視界のほとんどが緑色と空の青です。悠々と空を旋回するトンビも見えます。トンビがいつも雨宿りする杉の木も知っています。春は山桜がパッチワークのように点々と広がり、秋は鮮やかな赤や黄に染まります。冬は一面の銀世界。自然が纏う色彩はどうしてこんなに綺麗なんだろうといつも思います。

地元で認知症の方々とガーデニングをする法人を運営している関係で、土に触れること、畑仕事も日常です。土の重さ、風の湿り気、雨の匂い、台風の予兆。人の感覚は面白いくらい、自然の中にいると、自ら情報を掴みに行こうとするんですね。その繰り返しによって、気がつけば自分自身、底知れないエネルギーをもらっています。まさに大地の力というか、自然って、すごいなぁと感じます。地元でとれる海や山の旬も豊かです。胃袋で季節の到来を味わえるのも、自然豊かな土地に暮らす最高の贅沢の一つですね。

自由な匂いの世界には、正解や不正解がない

――アロマセラピーに惹かれた理由はなんですか?

鼻さえあれば、誰にでも楽しめる自由な匂いの世界には、正解や不正解がありません。自分には好きになれない匂いも、誰かにとっては忘れがたい、甘い記憶に結びつく香りかもしれません。

匂いの記憶は、不思議と他の五感の記憶をも蘇らせます。肌触り、声、味…。芋蔓を引っ張りだすように記憶が生き生きと引き出されるのです。時間も空間も軽々と超えて、今ここの体験になる。匂いの冒険、最高に楽しいですよ。

私たちは、ハッピーなおばあちゃんになりたい

――地元で認知症の方々とガーデニングをする一般社団法人「はっぷ」を立ち上げたきっかけはなんですか?

アロマセラピストとして都内の特養で働いた後、葉山町で介護のためのアロマセラピー講座をさせていただく機会が重なりました。少しずつ地域の高齢者介護の課題も知るようになって。私たちがいま自由に楽しんでいる日々の暮らし、例えば、春先に初物の生わかめを食べたり山菜を摘んで天ぷらにしたり…こんなに小さな町のささやかな楽しみや当たり前だった日常が、ある日、突然にぷつりと当たり前じゃなくなってしまう…それが"老い"の当たり前だと知って、疑問に思ったのがきっかけです。

なぜ、好きな暮らしが続けられないの??
なぜ、愛着ある自宅で暮らせないの??
疑問が次々と湧いてきました。
単純に、私たちは、ハッピーなおばあちゃんになりたい!そう思って、はっぷを立ち上げました。

おじいちゃんおばあちゃんが幸せそうに笑ってる町って、いい町なんじゃないかなと思うんです。そんな町はたぶん若い世代も、子どもたちも笑ってる町じゃないかな、と。お年寄りがもつ大らかなパワーは、他の世代にもすごく柔らかな巡りをもたらしてくれる、と実感として感じます。

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実際にお会いした大橋マキさんも、メールでのやりとりでも、明るくチャーミング!わたしたちがどんな立場であれ変わらずに思いやりがあっていつも真摯に接してくださる素敵な方です。インタビューへのご協力をいただきありがとうございました。

大橋マキさんは、瞑想アプリmuonおよび、瞑想専用スタジオmuonの音声ガイダンスを担当してくださっています。瑞々しく透明感のあるマキさんの声は、瞑想という静かな時間へと穏やかに導いてくれます。

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写真 井島健至(メインおよびプロフィール) 大橋マキ/編集 七戸 綾子