みなさんはアーユルヴェーダにどんな印象を持っていますか? シロダーラなど、美容エステのイメージがあったり、体質にあった食事をする、など、健康的に過ごすための方法が思い浮かぶのではないでしょうか。人にはそれぞれの個性があります。体にいい、と言われていても万人に当てはまる健康法がないように、実は、仕事の向き不向きにもアーユルヴェーダの考え方を応用することができます。

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ある女性が体調を崩し、アーユルヴェーダ医師のカウンセリングを受けときのこと。長年働いている職場で業務量が多く、変更の多い仕事を彼女なりにきちんとこなしていたものの、会社からの評価があまり思わしくない。同僚や上司からは、仕事が遅いと評価されてショックを受けていた。

そんな話をすると医師は、「あなたは他人に指示をされて働くのが本当は苦手なはず。回りとうまくやるというよりは、自分のペースを守りながら働くのが向いてるのでは。自営業など、自分の意思で仕事ができるように考えを変えてみたらどうでしょう?」と言いました。

すでに20年以上も会社員として働いてきた彼女は驚きました。それと同時に心当たりがありました。そういえば・・・・・・仕事に取りかかるのに時間がかかるし、やり始めるときっちりやらないと気がすまない。だからさらに時間がかかる…・・・。そんな気質が、会社が求めているスピードに応えられていないと評価されたのかもしれない。

彼女の場合は、アーユルヴェーダの体質(ドーシャ)では、カファ的な傾向があります。速さよりは、じっくりと落ち着いて自分のペースで考えたり、仕事をしたりするのを好みます。ところが、どちらかというとヴァータの性質の仕事内容が求められ、スピードや臨機応変さが必要だったのです。これは良し悪しではなく、仕事内容と自分の性質との相性の問題でもあります。自分の本質的な持ち味と求められているものに大きなギャップがあると、ストレスは増大します。そのままストレスを抱えていると、体調不良や心身消耗をしてしまいます。

その後彼女は、今までよりも早くできるよう心掛け、臨機応変さが欠けていなかったかを振り返ることや、ほかの人に仕事を分担してもらうように頼むなど、自身を省みることによって仕事がしやすくなるよう取り組み方を変えました。

アーユルヴェーダでは、子供の頃の体質や気質を振り返ってチェックすることがあります。持って生まれた素のままの自分と、様々な役割や思い込みを背負っている今の自分。そこに大きなギャップが生じているとき、ストレスを感じたり、体調不良に陥りやすくなります。

その状態が長引くと未病の状態から、病の発症へと繋がっていく可能性があります。アーユルヴェーダでは、病が発症する前に快適な状態、ギャップを解消することが望ましいとしています。

業務内容や仕事で悩んでいる方、何か疑問を感じている方、アーユルヴェーダやヨガを実践して、本質的な自己を知ることが助けになるのでは…と思います。

インドの伝統的医学アーユルヴェーダでは、ヴァータ、ピッタ、カファに分類される体質(ドーシャ)診断によって、それぞれの身体的、精神的な傾向というものが分析されています。主に身体的な事として紹介されていることが多いのですが、日常生活の傾向や仕事にも役に立つ事柄もありますので、ご紹介します。

ヨガと共に古来から伝わってきたアーユルヴェーダでは、私たちの身体だけでなく、自然界は五つの要素から構成されていると考えられています。空、風、火、水、地です。ドーシャはこの五つの要素の組合せにより、ヴァータは空と風、ピッタは火と水、カファは水と地の要素を含んでいます。

これは単なる占いとは違います。インドでは科学的にも研究され、健康管理や増進、病気の治療にも活用されています。アーユルヴェーダ医学の大学、病院もあるのです。

【ドーシャによる気質の例】
ドーシャは複合的に持っていることが多いため、これはあくまでもひとつの傾向です。参考としてご理解ください。

ヴァータ=抜群の変容性

好奇心旺盛で、あっ!と飛びついたりと考えるよりも先に行動。
情報収集能力が高いが故に、興奮しやすく直感や気分で動く傾向があり、不安定さがぬぐえない。出だしは人一倍早いが、スタミナ不足。
周囲には、変わりやすく継続が苦手な
印象を与えるも、切り替えが早く、
どっぷりハマらないので、失敗なども軽めで済みがち。情報収集役として当てにされているし、当人もそれを得意と感じている。

ピッタ=つねに効率重視

論理的に納得しないと動かないので、頑固な印象を与えるも、やるとなったら高い集中力を発揮して効率・機能的に行動するので、仕事が早い。
無駄を嫌い、効率を重視するが故にイライラしやすく、若干の丁寧さと協調性に欠けると周囲に印象を与えがち。

嫌われる事よりも効率的なやり方を優先するので、率先して矢面のたつこともいとわず、自然とリーダーシップをとっていることが多い。

カファ=安定と熟考

まず安心安全かを確認してから行動に移る傾向があるので、とりかかるのに時間が必要。

スロースターターの印象を与えるが、着実に安定して丁寧に仕事をこなす。
波風立てるのを好まないので、一見寛容だが、本当は快く思っていないこともあり辛抱強く我慢していることが多く、それで自滅することもある。

安定した状況やその領域を侵すような、反抗的な人や物事に敏感に反応し、守りぬく行動をとるので、安定感を発揮する。

いかがでしたでしょうか。ヨガインストラクターのアツコ先生による新連載、「living your life ~ 毎日を心地よく過ごす秘訣~」では、アーユルヴェーダを日常に生かし、自分にあった心地よい過ごし方を探ります。毎回、具体的な事例を交えて紹介します。 どうぞお楽しみに。

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文 ヨガインストラクター アツコ/イラスト 渡辺 美央/編集 七戸 綾子