今日も一日、よく歩きました

わたしの足が動いてくれたからでした

右、左、右、左……
もう休みたいよとこぼすこともなく
ストライキをすることもなく

キュッと先のつまった狭い靴の中で
つるつる滑りやすい繊維にくるまれて
冷たい風にさらされながら

母指球も、土踏まずも
豆粒ほどしかない小指の爪でさえ

持てる力のすべてを差し出し
右と左で連携をとりながら
健気に働いてくれました

わたしが立ち止まり
いつもの癖で右にもたれ
偏って偏って負担がかかってきても

膝・腰・背骨も総動員で
なんとか、かんとか、一瞬一瞬
バランスをとり続けてくれました

思えば
わたしはいつ右にばたんと倒れても
おかしくないような状況でした
地球の重力も遠心力も
常にわたしの体にのしかかっていました

この宇宙の広さに比べれば
存在しないのと同じぐらい小さな
このちっぽけな体に属しながら

母指球も、土踏まずも
豆粒ほどしかない小指の爪でさえ

堂々、地球と渡り合ってくれました

わたしの癖をまるごと受け止め
自らの何万倍もある大きな地球に対して
まっすぐ垂直であろうとする姿は
涙ぐましいほどの気高さでした

そんなわたしの足を
わたしはねぎらったことが
あったでしょうか

太い、短い、形がわるい、と文句を言い
動いてくれることをあたりまえに思い
他人の足と比べて落ちこんで

なにもあたりまえではなかったのに

今夜こそは必ずや
わたしの足をいたわってみせましょう

あたたかいおふろに入れて
ふわふわの泡できれいに洗って
香りのよいオイルかクリームを塗って
両手で包み、ほぐしてあげましょう

今日も一日、よく歩きました
今年も一年、よく生きました

***

ことばをお聴きのみなさまへ

こんばんは。
今夜のキーワードは「ありがとう」でした。

この原稿を書くとき、大好きなアイドルのお話を聞かせてくれた人がいました。そのアイドルのおかげで、笑ったりわくわくしたり、どれだけ幸せな気持ちになれたか、どんなにあたたかい時間を過ごせたか、ということを熱く語ってくれました。それは一方通行ではなく、自分たちもファンとして感謝されていると感じる、とも。そのお話はとても勢いがあって、ことばが自由で、すごくその人の気持ちが伝わってきました。

「大好き」と「感謝」は
とても近いところにあるのかもしれない

そして、深いところからじわーっと感謝の気持ちが湧いてくるようなとき、それはとても個人的な経験を通じて生まれる感情なのかな、と。その人の人生の凸凹かげんに、ぴたっとはまる感じ。

けがや病気をしたことのある人は、健康が「有り難い」と文字どおり身をもって感じるだろうし、人間関係で痛みを味わったことのある人には、優しいことばや思いやりが「有り難い」としみこむだろうし。

みなさんは、どうでしょうか。

今年一年、いろいろなことがあったと思います。凸凹の数も大きさも人それぞれだと思います。かけがえのない凸凹、かけがえのない人生。お世話になった人に、支えてくれた人に、自然に、命に、感謝することはもう世界のすべてが対象だけれど、

ちょっと立ち止まって、ここまでよく生きてきたよね、とわたしを「大好き」で「有り難い」と感じてみるのもいいんじゃないでしょうか。つい忘れてしまうことがありますよね。自分のこと。

ヨガのクラスで「オーム シャンティ」と3回唱えるとき、1回目は自分自身、2回目は身の周りの人たちや環境、3回目は世界に、祈りを捧げるのだとも言われます。そんなふうにまずひとつめの「ありがとう」を自分自身へ。

人生の凸凹かげん、有り難いと感じたこと、あなたの声も聴かせてください。次回が最終回です。連載全体の感想もぜひこちらから

書く瞑想ワークショップ
「わたしにかえる時間」
開催します!

満員御礼*キャンセル待ち受付中

日時:2019年12月13日(金)19:00〜20:30
場所:yoggy institute lab
  (スタジオ・ヨギー中目黒に併設)

この連載のもとになっている本「10+10」のおみやげ付きです。年末、書くことで心の大掃除をしませんか。読者の方と実際にお会いして、リアルに「わたしにかえる時間」を過ごせること、とっても楽しみにしています。

イラスト 内田 松里/文 古金谷 あゆみ