3月3日は耳の日。専門医に聞いた、耳で知る健康のサイン・・・耳鳴りやめまいなど、それを見逃さず、症状を軽減するためのコツをご紹介します。

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心配な耳鳴りとは?


ときに数秒から数分以内のキーンやジーンと鳴る耳鳴りは、心配ありません。これは生理的耳鳴りといって、誰でも経験する耳鳴りです。

ところが、急激に聞こえが悪くなったとともに耳鳴りが取れなくなってきたら、大至急に耳鼻咽喉科を受診して下さい。突発性難聴の可能性が高いからです。突発性難聴はどの年齢にも発症するのですが、とくに30~50歳代に増加しています。耳鼻咽喉科を受診せずに放置すると難聴は回復しません。原因はいまだに不明ですが、循環障害説とウイルス説が有名です。早期発見・早期治療の典型的な病気です。

最近、20~40歳代の女性に急増しているのが、低音部型難聴(正式病名は急性低音障害型感音難聴)です。この症状は、ボーとか、ゴーという耳鳴りが起こり、耳の圧迫感や耳が詰まった感じ(耳閉感)が出てきます。低い聴力が落ちてくるため、低音部型難聴と呼びます。これも早期に治療により回復することが多いのですが、再発も多い特徴があります。




耳鼻咽喉科を受診すべき耳鳴り



以下の中で思い当たることがある場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。

〇時間単位や日にち単位で耳鳴りが止まらない
〇難聴の自覚を伴う耳鳴り
〇急激に難聴が始まった
〇耳閉感や耳の圧迫感が取れない
〇自分の声が響く感じや高い音が割れて聞こえる
〇めまいやフラツキを伴う耳鳴り


早期発見・早期治療が鍵

突発性難聴の場合には、2週間以内に治療を開始しないと難聴の回復は極めて難しくなります。つまり、可能な限り早期に治療開始をしないと、回復のチャンスを失うことが分かっています。

低音部型難聴が増加している背景にはストレスが癒やされない環境にあります。この低音部の耳鳴りとともに、めまいが出てきたら、直ちに耳鼻咽喉科を受診して下さい。メニエール病という病気の始まりの可能性があるからです。

メニエール病になると、2~3時間から半日もめまい発作が続き、立ち上がることも出来ず、吐き気や嘔吐を繰り返し、進行すると難聴が増悪していきます。

メニエール病は原因が不明ですが、わたくしどもの詳細な研究から、ストレスにより自律神経の極めて異常な過剰興奮が起こっているのが分かってきました。低音部型難聴も再発を繰り返すと約10%がメニエール病に移行します。ストレスマネージメントがとても重要になります。




耳鳴りの症状を軽減するためのコツ



ヨガには、耳鳴りの要因にも考えられる自律神経の過剰興奮とストレスを緩める効果があります


常温の室内でアーサナをおこない、呼吸を意識したり、シャバアーサナを楽しんだり、瞑想に浸ったりすることで、自律神経が安定し、副交感神経が活発になります。

ただし、一回だけで自律神経の異常がリセットされることは残念ながらありません。継続的に最低週1回、可能であれば、週2回以上を月単位で続けることをお勧め致します。


継続こそが予防と治療に継がるのです。


ヨガの流派によっては、運動量の多いヨガのポーズの最中に、飲水を禁止にしています。これは医学的に絶対に間違いです! 常温のヨガでも汗が出るため、脱水がおこると耳管開放症という病気になります。自分の呼吸音が響いてきたり、聞こえが遠くなった感じがするのです。すぐにお水やスポーツドリンクを一口飲むだけで症状が消えて治ります。激しいヨガのポーズの最中には、頃合いをみて、飲水は必須と考えて下さい。

耳鳴りは、ストレスや病気のサインとして現れます。軽視せずに、気になるときはすぐに病院を受診しましょう。

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医師・医学博士・JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長 石井正則