むかし、むかし、ではなくて
すこし、みらい、のこと。
あるところに“第三者屋さん”がありました。

第三者屋さんは、
独自の天秤を使って
こまっているふたりの関係を測定し
第三者として立ち会ってくれるお店です。

ある日、
LとRというお客さんがやってきました。

Lはこう言います。
「なんでわかってくれないの。さみしい。
 ひとの気持ちも考えて」
Rはこう言います。
「一緒にいるのになんでさみしいの。
 感じ方のもんだいを言われてもこまるよ」

第三者屋さんは
さっそく、ふたりの考えを天秤にかけました。
するとどうでしょう?
天秤はぐらんぐらんとゆれつづけ
とまる様子がありません。

「もっと重く考えて」とLが言いました。
「もっと軽く考えて」とRが言いました。
ふたりはため息をついています。

「この天秤は
 どちらかが合わせたり
 どちらかが我慢したりしていると
 バランスがとれません。
 どちらがたくさん我慢しているか
 みてみましょう」

第三者屋さんは
ふたりの想いを天秤にかけました。
するとどうでしょう?
天秤はぴたりと水平な位置で止まったのです。

Lは怒って言いました。
「そんなわけない。こんなに我慢してるのに」
Rも怒って言いました。
「とんでもない。こっちのほうが我慢してる」

第三者屋さんは
Lの想いをRの手のひらに
Rの想いをLの手のひらにのせました。

さみしいと言っていたLの想いは
うさぎのような形をしていました。
小さく丸まってふるえています。
Rはだまって、うさぎをなでてあげました。

第三者屋さんはRに向かって
「あなたは、しばらく、
 そのうさぎのお世話をしてみてください」
と言いました。

感じ方のもんだいだと言っていたRの想いは
本のような形をしていました。
「しなければならないこと」という本には
たくさんの付箋が貼られていました。
Lがふーっと息を吹きかけると、付箋は
タンポポの綿毛みたいに飛んでいきました。

第三者屋さんはLに向かって
「あなたは、その本のすべてのページに
 花丸でもOKでもなんでもいいので
 もうしなくていい印をつけてみてください」
と言いました。

「だいじょうぶです。
 それぞれの想いをお持ち帰りになった方は
 今までの我慢とはちがう
 第三のアイディアを思いつきます。
 みなさんそうですよ」

LとRは顔を見合わせました。

「信じてみてください。
 うたがったり、あきらめたりした瞬間に
 第三のアイディアは消えてしまいます」

LとRは同時に言いました。
「もし思いつかなかったら?」

「だいじょうぶです。
 もしどうしても思いつかなかったら
 またここへいらしてください。
 そのときは、わたしと一緒に3人で
 “第四者屋さん”へ行きましょう」

***

ことばをお聴きのみなさまへ

残るキーワードも、あと2つ。連載満了を記念して、12月に「書く瞑想」ワークショップを企画中です。どうぞお楽しみに!

おたよりをご紹介します。

◯第十四夜「探求する」
長く続かない、そんな自分を責めてしまう……でも、私にはやりたいことがある。そう信じて日々を過ごしているけど、どれも何かしっくりこない。「コレだ!」と思ったものも、やはり通過点でしかありませんでした。 どちらかというと、文系が得意だけど、理系が好きで大学受験は理系の分野に挑戦しました。友人や家族からは好奇心旺盛で、何でも小器用にこなし、料理も得意、でも、その多才さを仕事にまったく活かせてないね、と言われています。「今夜のことば」を読んで、今の私のモヤモヤを見事に言い当てられた気がして、安心感に浸りながら涙が溢れてきました。 私の心に浮かんだことは、「一緒にいて楽しい人とつながっていたい。できないかもしれないけど、薬膳カフェを開きたい、ITエンジニアになりたい、文章を書く仕事をしたい」でした。ありえないほどピッタリなタイミングで、知るはずもない人から「ポジティブなヒント」を告げられた時は、神がその人を使って伝えてきたのだと思うことにしています。(私は無宗教ですが、「自然の摂理=神」という意識はあります)だから、著者の方が伝えられた時も、私が文章を読んで気づかされた時も、そこに神が宿ったのだと感じました。
(あやっぺさん)

あやっぺさん、ありがとうございます。うれしいです。きっと、このおたよりも、これからのあやっぺさんの姿も、ぴったりなタイミングで、ぴったりな誰かに、「ヒント」として届いていくと思いました!

どのキーワードへのおたよりも歓迎です。
どうぞこちらからお送りください。
ではまた第十八夜「時代とともに呼吸する」でお会いしましょう。

イラスト 内田 松里/文 古金谷 あゆみ